《Torus Dreaming》(2013)

ラジオから流れる音声、投影されるスライド写真、寝椅子などで構成する精神分析空間。寝椅子上の枕にスライド写真を投影、8秒間隔で写真が切り替わる。別室で再生したCDの音声をFMラジオで受信して流す。2分7秒のループ再生。複数のモノローグがイメージの集積をひとつの記憶に置き換えていくプロセスが、個人としてそれぞれの身体を擁して生きる世代間に、記憶の転移の場を生成させる。自らのものではない他者の真理を、自らの記憶として想い出せずにいる欠損と困難を扱うインスタレーション。

 

 

2013年1月、新春アート大講演会「美意識の変容」企画展示、
大阪市中央公会堂(大阪)

作中スライドの一部

会場風景(2013)

ラジオからの声 written by Akiko OKDA

声:子供

 

アーアーアー、聞こえますか。
こんにち只今より放送を開始致します

 

 

どこへ行けばみつかるのってきくと、それは母のいるところ
って 言ったから、ここにきたの。おもいだしたの。

けれどここはどこなのか、母はここから帰らないっていう。
どうしてそんなにここがいいの?

ここでわたし 誰かをみつければいいの?

 

 

私が通っていく 狭い道を。

何がそこを通らせるのか、それが一つのトーラスでないのなら。
とても….あぶないんじゃないの?

そこを通ったら、私 どこまで戻ってしまうの。

おかあさんよりも向こう、お母さんを待っていた何か。

 

そんなこと 起こると思っていなかった。 思ってなかったのに 起こってしまった、それをどうやって覚えるの?

 

 

覚えられなかったこと、母がわすれちゃったことを、
私が思い出すの?思い出すと、煙が見えてくる。そして煙を通って手が。

わかった、思い出せないから、ここがいい、って言うのね、お母さん。

代わりに私が思い出すの?

 

思い出しているとき、私はどこかに通っていく。
私の願いを、それはなんなの?愛なの?、それを通らせてくれるところに。
そこであなたが言う、きみが来たのは。。。

 

「きみがきた ここがどこか、しっている?」
「なんという場所なのか、しっている?」
「そこからなにがやってきたのか、おもいだせる?」

 

声:女

 

思い出すこと?彼、わたしのかわりに 寝椅子に座りたがる。
あいさつのかわりに、小さな舌でね、脚のゆびを嘗める。
(彼のあたまにはみみがはえてた。)こんなこと誰にも話さない方がいいの。
ほら、煙がみえる?黙ってね。シー。

 

 

 

声:男

 

僕にとってきみが誰なのか、一番だいじだって思う。違うかな。
なぜなら色んな愛があるというけれどだいじなのは僕がキミに感じているこの愛だから。

 

だいじな愛を仕舞っておく。こういうと笑う?

 

声:女

 

ほら、あの鳥がこっちをみていたのかな?

あの箱の中にしまわれていたのは、うずくまる母の姿。
「耐えることのできないことを耐え、

忍ぶことのとてもできないようなことを忍んできた」

って。

 

 

 

母はいつも言っていました。
母に何をそんなに我慢させてしまったのか
どう苦しめてしまっていたのか どうしても思い出せないんです

 

あの煙、とても 危険。

ほんとうは、誰が耐えていたの?覚えられる?

隙間が隙間を通らす、窓が窓に、瞳から瞳へ。

 

 

ラジオから放送が始まった?

それは強い夢のこと?